COVID-19の新たな変異株が感染拡大を引き起こしています。ウイルス学者がNB.1.8.1について知っておくべきことを説明します。

[公開日] 2025年5月28日午後4時14分(オーストラリア東部標準時)

[著者] Lara Herrero

記事を音読します。

オーストラリアでは寒い季節を迎える中、COVID-19が再び 注目を集めています。今回は新たな変異株「NB.1.8.1」の出現によるものです。

先週、世界保健機関(WHO)は、NB.1.8.1の世界的な感染拡大と、以前の変異株とは異なるいくつかの顕著な特徴を理由に、この変異株を「監視対象の変異株: “variant under monitoring”」に指定しました。

では、この新たな変異株について知っておくべきことは何でしょうか?

COVID-19の現状

COVID-19がパンデミックと宣言されてから5年以上が経過しましたが、依然として感染の波が定期的に発生しています。

現在、検査や感染報告を行う人が少なくなり、ウイルスの発生状況を追跡することはより困難になっています。しかし、入手可能なデータ によると、2025年5月下旬には、オーストラリアの感染者数は 増加傾向にあった ことが示唆されています。

ゲノム配列解析により、NB.1.8.1がオーストラリアで 流行している株の一つ であり、その数は 増加傾向にある ことが確認されています。 5月6日まで にオーストラリア全土で配列決定された症例のうち、NB.1.8.1は南オーストラリア州では10%未満、ビクトリア州では40%を超えました。

西オーストラリア州の廃水監視により、パースで採取された 廃水サンプルにおいて、NB.1.8.1が現在、主要な変異株であることが 確認されました

国際的にもNB.1.8.1は増加傾向にあります。2025年4月下旬 には、提出された全配列の約10.7%を占めるまでに増加しました。これは、4週間前のわずか2.5%から大幅に増加しています。配列決定された症例の絶対数はまだ少ないものの、この一貫した増加傾向を受けて、国際公衆衛生機関はより綿密な監視を行っています。

NB.1.8.1は特にアジアで蔓延しており、4月末には香港と中国で主要な変異株でした。

この変異株はどこから来たのでしょうか?

WHOによると、NB.1.8.1は 2025年1月に採取 されたサンプルから初めて検出されました。

これはオミクロン変異株の亜系統であり、組み換え型XDV系統から派生したものです。「組み換え: Recombinant」とは、2つ以上の既存の変異株の遺伝子混合によって新しい変異株が出現することです。

右の図は、NB.1.8.1がどのように発生したかをより具体的に示しています。

作表:Lara Herrero、BioRenderを使用して作成

研究結果は何と言っていますか?

以前の変異株と同様に、NB.1.8.1はスパイクタンパク質に 一連の変異 を有しています。スパイクタンパク質はウイルス表面にあるタンパク質で、私たちの細胞への「入り口」である ACE2受容体 を介して感染することを可能にします。

変異には、T22N、F59S、G184S、A435S、V445H、T478Iが 含まれます。このNB.1.8.1変異株はまだ発見されたばかりであるため、これらの変化が何を意味するかについてはまだ十分なデータがありません。しかし、最近発表されたプレプリント(査読前の研究)は、NB.1.8.1が注目を集めている理由について、いくつかの手がかりを示しています。

研究者らは、実験室ベースのモデルを用いて、NB.1.8.1が、試験された複数の変異株の中でヒトACE2受容体への結合親和性が最も高いことを発見しました。これは、NB.1.8.1が以前の株よりも効率的に細胞に感染する可能性があることを示唆しています。

この研究ではまた、ワクチン接種を受けた人や過去に感染した人の抗体が、この変異株をどの程度中和 (neutralise) または「阻害: block」できるかについても調べました。その結果、抗体の中和反応は、最近の別の変異株である LP.8.1.1 と比較して、NB.1.8.1に対して約1.5倍低いことが示されました。

これは、NB.1.8.1に感染した人が、以前の変異株と比較して、他の人にウイルスを感染させる可能性が高くなる可能性があることを意味します。

どのような症状が現れるのでしょうか?

これまでの証拠は、NB.1.8.1がより容易に拡散し、以前の感染やワクチン接種による免疫を部分的に回避する可能性があることを示唆しています。これらの要因は、シーケンシングデータにおけるこの変異株の増加を説明する可能性があります。

しかし重要なのは、WHOが他の変異株と比較して、この変異株が より重篤な疾患 を引き起こすという証拠をまだ確認していないことです。

報告によると、NB.1.8.1の症状 は、他のオミクロン亜変異株と密接に一致すると考えられます。

一般的な症状には、喉の痛み (sore throat)、倦怠感 (fatigue)、発熱 (fever)、軽度の咳 (mild cough) 、筋肉痛 (muscle aches)、鼻づまり (nasal congestion) などがあります。場合によっては、胃腸症状 (Gastrointestinal symptoms)も現れることがあります。

COVID is continuing to evolve. Joannii/Shutterstock:COVIDは進化を続けています。

ワクチンについてはどうでしょうか?

この変異株は、オーストラリアの冬の呼吸器疾患シーズンにおいて重要な役割を果たす可能性があります。公衆衛生上の対応は、綿密な監視、継続的なゲノムシーケンシング、そして最新のCOVIDブースター接種の促進に引き続き重点を置いています。

WHOは、NB.1.8.1に対する中和抗体レベルが わずかに低下 したとしても、現在のCOVIDワクチンは依然としてこの変異株による 重症化を予防できる はずだと指摘しています。

作表:The Conversation。 出典:オーストラリア政府 データを取得 Datawrapperで作成

オーストラリアをはじめとする多くの国で入手可能な最新の追加接種は、NB.1.8.1の派生元株であるJN.1を標的として います。そのため、依然として高い予防効果が得られると考えられます。

冬が近づき、新たな変異株も出現している今、接種資格のある方 は、COVID-19の追加接種を検討する良い機会かもしれません。一部の人々、特に医学的に脆弱な人々にとって、COVID-19は依然として深刻な病気となる可能性があります。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われています。オリジナルの記事を読めます。original article.

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