ライトトライアド:人間に対する私たちの最も暗い恐怖に対する心理学の答え

Volunteers sweep the boardwalk in Brooklyn after the 2012 Hurricane Sandy. By Jim.henderson – Own work, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=22926536 2012年のハリケーン・サンディの後、ブルックリンの遊歩道を清掃するボランティアたち

[公開日時] 2025年6月20日午後4時31分 (BST)

[著者] Christian van Nieuwerburgh

記事を音読します。

今起こっている出来事のせいで、人間への信頼を失っていませんか?もしそうなら、それも当然です。「ドゥームスクロール*: “doomscrolling” 」という習慣は、人間は本質的に自己中心的 (self-centred) で思いやりがない (uncaring) と思い込ませます。(編集者注*)

アメリカ心理学会 (the American Psychological Association) によると、私たちの多くは「見出しストレス障害: “headline stress disorder”」に苦しんでいます。ネガティブなニュースにさらされることで、人間に対する暗い見方が形成される ことは、誰もが経験から知っています。

心理学者 (psychologists) は何十年もの間、人間の性格の暗い側面に興味を抱いてきました。マキャベリズム (Machiavellianism) 、ナルシシズム (narcissism) 、ソシオパシー (sociopathy) のいわゆる「闇の三要素: dark triad」は、厳しい調査の対象となってきました。これらの暗い特性が強い人は、支配的で自己中心的で、共感力に欠ける傾向があります。

ドゥームスクロールという習慣と、生まれ持ったネガティブバイアス (natural negativity bias) によって、私たちは 人間の善良さを疑い始める のです。

これに対し、アメリカの心理学者スコット・バリー・カウフマン (Scott Barry Kaufman) と彼の同僚たちは、「光の三要素: the “light triad”」という研究を通して、人間性の肯定的な側面に光を当てました。

ライト・トライアド (光の三要素) は、カント主義: Kantianism(人を目的達成のための手段としてではなく、本質的に価値のある存在として扱うこと)、ヒューマニズム、そして人間への信頼といった、人間性の肯定的な側面を強調しています。ライト・トライアドで高いスコアを獲得した人は、他者の内なる価値を認め、人間の善良さを信じ、尊厳 (dignity) と敬意 (respect) を持って他者に接します。

カウフマンは、Scientific American誌の ブログ で、これらの人格の肯定的な側面は「世界に善良さがあるだけでなく、私たち一人ひとりの中にも善良さがあることを忘れがちな社会において、研究の対象として注目し、育む価値がある」と主張しています。

(ライト・トライアドのどのレベルに当てはまるか知りたい人は、オンラインで無料の アンケート に答えることで調べることができます。)

人格をバランスの取れた視点で捉えることで、私たちは一人ひとりの中に秘められた可能性の広さに気づくことができます。人間は、利己的で残酷な行為をすることもある一方で、素晴らしく心温まる親切な行為をすることもあります。

私たちは皆、闇の三要素と光の三要素の両方の特性を持っています。最高の状態にある時は、社交的 (sociable) で、前向き (positive) で、支え合い (supportive)、寛容 (forgiving) です。人間の本質は白か黒かではありません。この複雑さを受け入れることで、自分自身と他者に対してより思いやりを持つことができます。

今日、私たちは様々な困難に直面し、圧倒され、私たちが共有する人間性を見失いがちです。しかし、特に今こそ、そうならないようにしなければなりません。私たち皆の中に、優しさ (kindness)、利他主義 (altruism)、そして思いやり (compassion) の潜在能力があることを思い出しましょう。ここに、希望を高めるための5つの簡単な方法をご紹介します。

小さな親切を実践しましょう

列に並んでいる時に誰かを先に行かせたり、車が合流するのを許したり、温かい笑顔を向けたりするなど、日常の些細な行為を試してみてください。こうした小さな親切は、誰かの一日を明るくし、自分の気分を高め、それを目撃した周りの人を励ますことができます。

思いやりを示す

思いやりは不可欠です。まずは自分自身に優しくすることから始めましょう。辛い時に自分を甘やかすことで、セルフコンパッション(自己慈悲)を実践しましょう。そして、同じ思いやりを他の人にも示しましょう。誰もが常に何かの渦中にいることを忘れないでください。少しの忍耐 (a bit of patience)、優しい言葉 (a few kind words)、そして心からの承認 (a genuine acknowledgement) が、大きな違いを生み出すことがあります。

ポジティブな気持ちを広める

WhatsAppグループ内でネガティブなニュースを共有する代わりに、自分のネットワークやコミュニティ内でポジティブで心温まるストーリーを意識的に取り上げましょう。希望を与え、人間の優しさを称える記事や動画を共有しましょう。ポジティブな気持ちを広めることで、私たちのネガティブバイアスを打ち消し、私たちが住む世界について、より希望に満ちた物語を作り出すことができます。

意識的に耳を傾ける

気を散らすものが多い現代において、誰かに全身全霊で耳を傾けることは、大きな力となります。時間をかけて相手の話をじっくりと聞き、相手が認められ、大切にされ、耳を傾けられていると感じてもらいましょう。

会話に積極的に参加し、「ラディカル・リスニング: “radical listening”」を実践することで、相手とのつながりを強めるだけでなく、より人間味あふれる環境を作り出すことができます。

ロバート・ビスワス=ディーナー (Robert Biswas-Diener) と私は、『ラディカル・リスニング:真のつながりを築く術: Radical Listening: The Art of True Connection』という本を執筆しました。このコンセプトについて詳しく知りたい方は、数多く配信されているポッドキャストを聴いてみてください。

Radical listening explained. ラディカルリスニングの説明。

コミュニティを通してつながる

人間は、社会的なつながりを通して成長します。地域のイベントに参加してみましょう。ゴミ拾いグループに参加したり、地元の学校でボランティアを申し出たり、チャリティ募金活動に参加したり、カジュアル・コーヒー・モーニング* を企画したりしてみましょう。こうした活動は、より深いつながりを感じさせ、私たちは皆、より大きなものに属し、共に変化をもたらすことができるという考えを強めるのに役立ちます。(編集者注*)

一つ一つの前向きな行動と、豊かな会話は大切です。こうした小さなことを積み重ねることで、私たちが共有する人間性に希望を再び灯す役割を果たすことができるでしょう。それは、私たち一人ひとりが思いやりを持ち、ラディカルに耳を傾け、他者の良いところを見ることから始まります。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われており、The Conversationによる正式な翻訳ではありません。オリジナルの記事を読めます。original article.

[編集者注]

ドゥームスクロール (doomscrolling) : メリアム・ウェブスター辞典によると、ドゥームスクロールとは「悲しく、落胆させ、あるいは憂鬱にさせるようなニュースであっても、それを見続けたりスクロールし続けたりする傾向」を指します。多くの人にとって、これはパンデミックによって生まれた習慣であり、今後も続く可能性が高いでしょう。Christian van Nieuwerburgh

カジュアル・コーヒー・モーニング (casual coffee morning) : 「カジュアル・コーヒー・モーニング」とは、一般的にコーヒーを囲んで友人、同僚、あるいは地域住民とゆったりと交流する集まりを指します。気楽な雰囲気の中で、交流を深め、おしゃべりをし、互いの交流を楽しむ機会です。個人、地域団体、あるいは企業が主催するイベントで、ペストリーやスナックなどの軽食が提供されることが多いです。

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