フェディバースは、大手テクノロジー企業に頼らないソーシャルメディアの可能性を秘めています。ただし、よくある落とし穴を回避できればの話ですが。

In the fediverse, you can have your own social media platform but also connect to many others. Aram Sinnreich, CC BY-ND:フェディバースでは、自分だけのソーシャルメディアプラットフォームを持つだけでなく、多くのプラットフォームとつながることができます。

公開日:2025年3月12日午後0時52分(GMT)
著者:Aram Sinnreich, Robert W. Gehl

最近あなたは、多くの人が大手ソーシャルメディアネットワークである X、Instagram、Facebookに代わるプラットフォームを試していることに 気づいているかもしれません。例えば、イーロン・マスクが2022年にTwitterを買収し、Xに改名されたTwitterで、はるかに多くの偽情報ヘイトコンテンツ を許可し始めた後、広告主とユーザーはTwitterから離れ始めました。より最近には、Metaが ヘイトスピーチ規制を撤回 することを決定したことで、多くの人がInstagramとFacebookからの退会を検討しています。

最も人気のある新しい目的地としては、MastodonPixelfedといった「連合型」サービス (“federated” services) や、準連合型の Bluesky などが挙げられます。連合型 (federated) とは分散型 (decentralized) という意味です。Xのような単一の中央サービスではなく、連合型システムは数万台のサーバーを擁します。また、非営利 (nonprofit) でコミュニティによって運営 (community-run) されている傾向があります。

連合型サービス、別名「フェディバース: the fediverse」は、公共コミュニケーション (public communication)、対話 (dialogue)、議論 (debate) のためのネットワークとして 高く評価され てきました。企業ではなく一般の人々が自分たちの社会空間を形成し、広告主、ヘイトスピーチ、侵入的なアルゴリズム (intrusive algorithms) をはるかに容易に回避できる場所です。報道機関、非営利団体、大学、さらには政府機関でさえ、フェディバースやBlueskyを実験的に利用し、ソーシャルメディアでの存在感をXから部分的に、あるいは完全に移行させています。

しかし、メディアコミュニケーション を研究する私たち研究者、そして共著者のトーマス・ストリューエット (Thomas Struett) とパトリシア・アウフダーハイド (Patricia Aufderheide) が 最近発表した論文 で述べているように、歴史を振り返ると、デジタル公共圏にとって有望なプラットフォームが、不運にも消滅した例は数多くあります。これらの例から、潜在的な落とし穴とその回避策を特定しました。

The fediverse in a nutshell.

私たちは3つの課題を特定しました。それは、船頭が多すぎること、商業的搾取、そして連座制です。

船頭が多すぎること

大規模ソーシャルメディアプラットフォームの良い点の一つは、誰が責任者なのかが明確であることです。

しかし、MetaやXのような 権力集中型 ではなく、フェディバースは分散型のガバナンス構造を採用しています。分散型ガバナンスは、政治的検閲や監視資本主義 (surveillance capitalism) といった大規模ソーシャルメディアプラットフォームに伴う落とし穴を回避するのに役立ちますが、フェディバースが価値ある代替手段となるためには、対処しなければならない他のリスクももたらします。

つまり、船頭が多すぎると、進路決定は難しくなります。例えば、コンテンツモデレーション (チェック機能) を考えてみましょう。フェディバースは、優れたブロッキングツールと行動規範を提供していますが、これらのツールは個々の「インスタンス」(つまり、数万台ものフェディバースサーバー)に固有のものです。誰がブロックする対象を決めるのでしょうか?中央集権的な権限がないため、ガバナンスはフェディバースのメンバーに委ねられており、メンバーは#fediblockなどのハッシュタグを使って緩やかに連携しています。つまり、ハラスメントを受けやすい 人は、ハラスメント防止のためにより多くの作業を担わなければならないということです。

商業的搾取

フェディバースは、電子メールやウェブ自体と同様に オープンソース です。また、大手ソーシャルメディアプラットフォームからの 介入なしに 開発されました。しかし、その起源が必ずしも大手プラットフォームによる支配を防ぐわけではありません。

例えば、”電子メール” がどうなったか考えてみてください。かつては何千もの異なる電子メールプロバイダーがありました。しかし今日では、ほぼすべての人が GoogleのGmailとMicrosoftのOutlook を使用しています。これは主に、これらの企業が付加価値を加え、雇用主、学校、その他の組織向けの大規模パッケージの一部として電子メールを販売したためです。

これは容易に再び起こり得ます。Metaはすでに、新しいマイクロブログサービス “Threads” でフェディバースプロトコルを使用しています。これは Threads や Mastodon ユーザーのコミュニケーションに役立つ一方で、Metaがテクノロジーの未来を形作ることに強い関心を持っていることも意味します。これは、今日のフェディバースユーザー、特に Instagram や Facebook から逃げ出したばかりのユーザーの希望と相反する可能性があります。

It’s easy to build your own social media platform in the fediverse. Running one is another matter.:フェディバースで独自のソーシャルメディアプラットフォームを構築するのは簡単です。しかし、それを運営するのはまた別の話です。

連座制

一部のソーシャルメディア企業はフェディバースを掌握しようとする一方で、他の企業はフェディバースの不適切な利用方法を強調することで、その評判を貶めようとするかもしれません。これは、ピアツーピアファイル共有 (peer-to-peer file sharing) 、ダークウェブ (the dark web) 、エンドツーエンド暗号化 (end-to-end encryption) など、過去にも有益な代替技術がいくつか登場した際に起こりました。

フェディバースはすでにこうした課題に直面しています。2023年には、スタンフォード大学 (Stanford University) の研究者が、児童性的虐待コンテンツがフェディバースに容易に定着する可能性があることを示唆する 報告書を発表 しました。これに、フェディバース全体に「有害なコンテンツが蔓延し: toxic content is prevalent、急速に拡散している」という研究者の主張を加えると、児童性的虐待コンテンツが制御不能に拡散しているという恐ろしい物語が浮かび上がります。

こうしたコンテンツはフェディバースの一部で蔓延する可能性はありますが、児童性的虐待コンテンツが蔓延するという恐ろしいシナリオは現実には存在しません。共有ブロックリストなど、これを防ぐモデレーションツールは数多く存在します。しかし、フェディバースが有害コンテンツで溢れているという考えは、イーロン・マスク (Elon Musk) によって Xから Mastodonへのリンクをブロックするという反競争的な決定を正当化するために利用されました。

これらのプラットフォームは生き残れるのでしょうか?

私たちは、フェディバースとBlueskyが真に連合化されたプラットフォームになることができれば、依然として楽観的です。

しかし、テクノロジーの民主化が民主的な結果を保証するわけではありません。

これらのプラットフォームがその約束を果たすためには、過去の失敗から学ぶことが重要です。それは、プラットフォームが安全で、アクセスしやすく、非営利で、尊重されるものであり続けるようユーザーが努力することを意味します。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われています。オリジナルの記事を読めます。original article.

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