

[公開日] 2018年4月3日 午後0時12分(英国夏時間)
[著者] :Guillaume Thierry

英語は、習熟度を除けば、世界で最も広く話されている言語となり、中国語(マンダリン)とスペイン語を上回り、最高の地位を獲得しました。英語は101カ国で話されていますが、アラビア語 ( Arabic) は60カ国、フランス語 (French) は51カ国、中国語 (Chinese) は33カ国、スペイン語 (Spanish) は31カ国で話されています。小さな島国から生まれた英語は、国際ビジネス、世界規模の外交、そして科学の分野で共通語 ( lingua franca) の地位を獲得しました。
しかし、英語、そしてあらゆる言語が「世界共通語: “universal” language」として成功を収めるには、脆弱性 (vulnerability) という大きな代償が伴います。英語が話者、聞き手、あるいはその両方にとって第二言語である場合、問題が発生します。どれほど堪能 (proficient) であっても、英語と第一言語(または「母語: “native” language」)の理解度によって、相手が何を言っているのか正しく理解できなくなることがあります。
第二言語を使う人は、母語で話している時とは若干異なる行動をとるように見えます。この現象は「外国語効果:the “foreign language effect”」と呼ばれています。私たちの研究によると、例えば中国語を母語とする人は、ギャンブルにおいて、母語で肯定的なフィードバック(勝ち)を受けた場合、否定的なフィードバック(負け)を受けた場合よりもリスクを取る傾向が強かったことが示されています。しかし、同じ肯定的なフィードバックを英語で受けた場合、この傾向は消失し、つまり衝動性が低下 (less impulsive) しました。まるで第二言語でより合理的に行動しているかのようでした。
第二言語でのやり取りにおいて衝動性が低下することは肯定的に捉えられるかもしれませんが、人間関係においては、状況ははるかに深刻になる可能性があります。第二言語では、話者は感情的になりにくく (be less emotional) 、他者の感情状態に対する共感 (empathy) や配慮 (consideration) も少なくなる傾向があることが研究で明らかになっています。
例えば、私たちは、英語の否定的な言葉にさらされた中国語と英語のバイリンガルが、無意識のうちにそれらの言葉の精神的影響を遮断していることを示しました。また、普段は母語であるポーランド語の悲しい発言に心を痛めるポーランド語と英語のバイリンガルは、同じ発言を英語で受けても、それほど動揺しない 傾向にあることを示しました。
私たちのグループによる 最近の別の研究 では、第二言語の使用が真実を信じる傾向にさえ影響を与える可能性があることが分かりました。特に、会話が文化 (culture) や個人的な信念 (intimate beliefs) に触れる場合です。

English is one of the most studied languages in the world. spaxiax/Shutterstock 英語は世界で最も学習されている言語の一つです。
今日、世界では英語を第二言語とする人が圧倒的多数を占めているため、英語を母国語とする人は、他のどの言語よりも頻繁に英語で非母国語とする人と交流します。そして、母国語と外国語の会話において、外国語話者は感情的に距離を置く傾向が強く、異なる道徳的判断 を示すことさえあることが、この研究で示唆されています。
さらに、英語はグローバルなコミュニケーションの素晴らしい機会を提供する一方で、その卓越性ゆえに、英語を母国語とする人は言語の多様性に対する認識が低いという問題があります。これは、言語間の違いが世界の概念化、さらには 認識の違い と密接に関連しているという確かな証拠があるため、問題となっています。
2009年には、濃い青と薄い青を表す単語が2つあるギリシャ語を母国語とする人は、英語を母国語とする人よりも、薄い青と濃い青のコントラストを より顕著に捉えていることを示しました。この効果は、単に育った環境の違いによるものではありませんでした。英語を母国語とする人々は、青と緑のコントラストに対して同様の感受性を示しました。後者は英国では非常に一般的です。
他方で、第二言語で話すことと母国語で話すことは同じではありません。しかし、言語の多様性は、認識や概念に大きな影響を与えます。これは、第二言語話者が他者と交流する際に、情報にどのようにアクセスし、どのように解釈し、どのように使用するかに必ず影響を及ぼします。
バランスの取れた意見交換、そして他者の感情状態や信念への配慮には、互いの母国語を十分に理解していることが不可欠であるという結論に至ります。言い換えれば、関係者全員が相手の言語を理解している、真のバイリンガル交流が必要なのです。したがって、英語を母国語とする人々が、彼らの言語で他者と会話できることは、英語を母国語とする人々にとって同様に重要なのです。
米国と英国は、世界の言語バランスの是正 (rectifying) と外国語の大量学習の促進に、もっと多くの貢献ができるはずです。残念ながら、ネイティブに近い外国語運用能力を身につける最良の方法は、他国を訪れ、その言語を話す現地の人々と交流する「イマージョン(没入)」です。そうすることで、現在の政治的分断を埋める効果も期待できます。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われています。オリジナルの記事を読めます。original article.