抗老化薬ラパマイシンは、カロリー制限とほぼ同等の寿命延長効果を発揮する可能性がある ― 新たな研究

There’s a better way. Africa Studio/Shutterstock:もっと良い方法があります。

公開日:2025年6月19日 午前9時06分(英国夏時間)

著者:Zahida Sultanova

記事を音読します。

何世紀にもわたり、人類は寿命を延ばす方法を模索してきました。錬金術師 (alchemists) は賢者の石 (the philosopher’s stone) を発見することはできませんでしたが、科学者たちは一貫して、少なくとも特定の実験動物においては、食べる量を減らすことで長生きできることを示しています。しかし、食事を楽しみながら長生きする方法は見つかるのでしょうか?

食事療法 (dieting) の生物学的効果を模倣する化合物がその答えとなる可能性があり、最も人気のあるダイエティング模倣薬はラパマイシン (rapamycin) とメトホルミン (metformin) です。新たな研究 で、私と同僚は、ラパマイシンは食べる量を減らすのとほぼ同程度に寿命を延ばすのに対し、メトホルミンはそうではないことを発見しました。

食べる量を減らす、つまり食事制限 (dietary restriction) は、約1世紀前 の研究で、食べる量を減らした実験用ラットが、十分に栄養を摂取した実験用ラットよりも長生きし、科学者たちを驚かせて以来、長生きを実現するためのゴールドスタンダード (the gold standard) となっています。

しかし、多くの人にとって、恒久的なダイエティングを続けるのは困難で、決して楽しいものではありません。また、極端にやりすぎると、健康に悪影響を及ぼすことさえあります。そのため、私たちは、ダイエティング効果を模倣した薬剤が、望ましくない副作用なしに、食事量を減らすのと同じ効果をもたらすかどうかを調べたいと考えました。

ラパマイシンは1970年代に イースター島の土壌に生息する細菌 から初めて発見され、強力な免疫抑制剤 (immunosuppressant) として、現在では医療専門家によって臓器移植の拒絶反応 (organ-transplant rejection) の予防に使用されています。ラパマイシンは、細胞に栄養素が豊富であることを知らせる分子スイッチを阻害することで作用します。

一方、メトホルミンは、フレンチライラック: French lilac(別名ゴーツルー: goat’s rue)に含まれる化合物の合成系で、2型糖尿病 (type 2 diabetes) の血糖コントロールに広く処方されています。どちらの薬剤も、体が栄養素とエネルギーを感知する能力に関与しているため、私たちのような生物学者は、食事量を減らすことで活性化されるメカニズムを模倣できるのではないかと期待していました。

この疑問を解明するために、多くの研究結果を統合し、全体的なパターンがあるかどうかを調べました。私たちは数千もの科学論文を綿密に調査し、最終的に、魚類からサルまで8種の脊椎動物 (vertebrate species) を対象とした、生存率と研究方法に関する十分な詳細を提供する167件の研究に絞り込みました。そして、3つの長寿戦略、すなわち、食事量を減らすこと、ラパマイシンの服用、メトホルミンの服用を比較しました。

その結果、食事量を減らすことが、すべての動物において最も一貫した延命方法として依然としてトップに立っていましたが、ラパマイシンもそれに僅差で続きました。一方、メトホルミンには明確な効果は見られませんでした。食事量を減らすことによる延命効果は男女ともに同じであり、食事プランが少量の食事か断続的な断食かは関係ありませんでした。

そのため、ラパマイシンは新たな抗老化療法の最も期待できる手掛かりの一つとなっています。老化は病気とはみなされないかもしれませんが、がんから認知症まで、多くの疾患の背後にある危険因子です。この根本的なプロセスを遅らせることができれば、世界の人口高齢化が進む中で、質の高い生活の年数を増やし、医療費を削減するというメリットがもたらされるでしょう。

Rapamycin was first isolated from bacteria found in the soil on Easter Island. JHVEPhoto/Shutterstock.com:ラパマイシンはイースター島の土壌で発見された細菌から初めて単離されました。

有望な初期兆候ですが、まだそこまでには至っていません。

しかし、考慮すべき重要な点がいくつかあります。まず、実験ごとにかなりのばらつきがあり、食事量の減少やラパマイシンの摂取が寿命を縮めるという研究結果さえありました。

また、これらの証拠のほとんどは、私たち人間と同じ遺伝子を多く持ちながらも、明らかに私たち人間と全く同じではないマウスやラットから得られたものです。

最後に、ラパマイシンには免疫や生殖の抑制といった副作用がある可能性があります。研究者たちは現在、より低用量のラパマイシンを投与することで、副作用なしに効果が得られるかどうかを調べています。

初期の兆候は有望です。現在進行中の ヒトラパマイシン臨床試験 では、低用量のラパマイシンを断続的に投与されたボランティアが、健康寿命の指標に良い効果を示しました。メトホルミン については、ヒト臨床試験がまだ進行中で、結果は数年後に明らかになる見込みです。

今のところ、長生きするためにラパマイシンの処方箋を求めて医師の元を急ぐ必要はありません。しかし、あまり知られていない土壌細菌から抽出されたこの薬剤は、たった一つの分子経路に干渉するだけで、食事量を減らすことによる効果を模倣できることを示しています。課題は、この発見を活用して、生活の質、あるいはたまにチョコレートケーキを食べたいという欲求を損なうことなく、より長く健康を維持できる治療法を開発することです。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われており、The Conversationによる正式な翻訳ではありません。オリジナルの記事を読めます。original article.

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