世界的な住宅危機が深刻化する中、世界はウルグアイから何を学べるか

Located in the Peñarol neighborhood of Montevideo, COVIMT 1 was the city’s first mutual aid housing cooperative. It was founded by textile workers, who completed construction of the complex in 1972. Bé Estudio, CC BY-SA モンテビデオのペニャロール地区に位置するCOVIMT 1は、同市初の相互扶助住宅協同組合でした。繊維労働者によって設立され、1972年に完成しました。

公開日:2025年7月22日午前8時35分(米国東部夏時間)
著者 Jennifer Duyne Barenstein, Daniela Sanjinés

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18億人以上が、適切かつ手頃な価格の住宅にアクセスできない状況にあります。しかし、最も脆弱な立場にある市民に尊厳ある住居を確保するための実質的な措置を講じている国はごくわずかです。

私たちは、協同組合住宅 (cooperative housing) が、手頃な価格の住宅危機に対する解決策の一つとなり得るかどうかを研究しています。協同組合住宅には様々なモデルがありますが、一般的には、住民が共同でアパートを所有・管理し、民主的なプロセスを通じて責任、費用、意思決定を分担します。

すでに協同組合制度を導入している国もあります。スイスのチューリッヒ (Zurich) では、市内の住宅ストックの約5分の1 が協同組合住宅です。

エルサルバドル (El Salvador) やコロンビア (Colombia) など、他の国々では、自国の既存の住宅政策に住宅協同組合を統合するのに苦労しています。実際、ラテンアメリカ (Latin America) にはコミュニティ主導型住宅や相互扶助型住宅の長い伝統があるにもかかわらず、多くの地域で住宅協同組合は根付いていません。その主な理由は、政治的および制度的支援が弱いことです。

ウルグアイ (Uruguay) は例外です。

人口わずか340万人のこのラテンアメリカの小国には、強固な住宅協同組合のネットワークがあり、様々な所得水準の市民に手頃な価格で恒久的な住宅を提供しています。

実験が法律に

ウルグアイの住宅協同組合は、深刻な経済混乱の時代であった1960年代に誕生しました。

最初のいくつかのパイロットプロジェクトは素晴らしい成果を上げました。政府資金、米州開発銀行からの融資、そして組合員の拠出金を組み合わせた資金で賄われたこれらの協同組合は、従来の住宅よりも費用対効果が高く、建設期間が短く、品質も高かったのです。

こうした初期の成功は、1968年にウルグアイで国家住宅法が成立する上で重要な役割を果たしました。この法律は住宅協同組合を正式に認め、様々なモデルを支援する法的枠組みを導入しました。登場した最も一般的なモデルは、「貯蓄協同組合: “savings cooperatives”」と「相互扶助協同組合: “mutual aid cooperatives”」に大まかに解釈されます。

貯蓄モデルでは、組合員が貯蓄をプールし、資本投資の約15%を拠出します。これにより、建設資金として政府補助金付きの住宅ローンを利用できます。協同組合は、組合員間で返済責任をどのように分担するかを決定します。通常、組合員は割り当てられた住宅ユニットの費用に相当する「社会持分: “social shares”」を協同組合内で購入します。組合員が協同組合を脱退する場合、その社会持分は返済されます。この持分は相続権も有するため、相続人に引き継ぐことができます。

一方、相互扶助モデルでは、貯蓄のない世帯でも、週21時間を建設作業に費やすことで参加できます。作業は個人の能力に応じて割り当てられます。作業内容は、肉体労働から建設資材の発注といった事務作業まで多岐にわたります。

By contributing their labor, Uruguayans without savings can still participate in cooperative housing. Federación Uruguaya de Cooperativas de Vivienda por Ayuda MutuaCC BY:貯蓄のないウルグアイ人も、労働力を提供することで協同組合住宅に参加できます。ウルグアイ協同組合住宅連盟

これらの違いはあるものの、両方のモデルには共通する基本原則があります。それは、土地と住宅ユニットが共同で保有され、民間市場から永久に排除されるということです。

通常、協同組合が設立されると、各世帯は州の融資返済と維持費を賄うための月額会費を負担しなければなりません。その見返りとして、組合員は質の高いアパートの「使用と享受: “use and enjoyment”」に関する、無制限かつ継承可能な契約を結びます。組合員が脱退する場合、これまで支払ってきた分担金の一部が払い戻されますが、通常は10%の控除が組合に留保されます

これにより、協同組合住宅は長期的な安心感を提供し、特に低所得者層にとって手頃な価格で入居できることが保証されます。

国の支援と国民の参加

現在、ウルグアイには2,197の住宅協同組合があり、国内の世帯の約5%に住宅を供給しています。そのうち約半数は首都モンテビデオ (Montevideo) に所在し、1,008の協同組合が活動しています。協同組合は、わずか住宅12戸から多ければアパート700戸までを所有する場合もあります。

この成長は、国の支援、協同組合連合会、そして非営利団体のおかげで可能になりました。

政府は、住宅協同組合の成功は継続的な国民の支援にかかっていることを認識していました。国家住宅法 (The National Housing Law) は、協同組合の権利と責任を定義しました。また、運営の監督、財政支援の基準設定、土地へのアクセスの提供といった国の義務も規定しました。

住宅協同組合連合会も重要な役割を果たしてきました。貯蓄協同組合連合会 (the federation of the savings cooperatives) であるFECOVIは、100以上の協同組合を代表し、約5,000世帯にサービスを提供しています。相互扶助協同組合連合会 (the federation of mutual aid cooperatives) であるFUCVAMは、はるかに規模が大きく、政治的にも活発で、730の協同組合に所属する3万5000世帯以上を代表しています。

住宅権、そしてより広い意味での人権擁護の組織化と擁護活動に加え、加盟協同組合に対し、FUCVAMは、協同組合運営強化のための研修、法的カウンセリング、紛争調停など、幅広い支援サービスを提供しています。

最後に、このモデルの重要な柱となるのが、国家住宅法でも認められている技術支援機関 (the Technical Assistance Institutes) です。これらは、協同組合に助言を行う独立した非営利団体です。

彼らの役割は極めて重要です。大規模住宅プロジェクトの建設は複雑であり、市民の大多数は建設やプロジェクト管理の経験がありません。ウルグアイの協同組合モデルの成功は、彼らの支援なしには考えられません。

郊外から都心へ

ウルグアイの住宅協同組合は、拡大しただけでなく、変化するニーズや課題に対応して進化してきました。

設立当初、多くの協同組合は都市郊外に低密度住宅を建設していました。このアプローチは、19世紀後半の都市計画哲学であるガーデンシティ運動 (the Garden City movement) の理念に大きく影響を受けています。ガーデンシティ運動は、低密度住宅と開発と緑地のバランスを重視するものでした。ウルグアイでは、一戸建て住宅が文化的に好まれ、都市中心部では土地価格が高かったのです。

写真:日本語翻訳版では表示できません。オリジナル版を参照してください。Early Uruguayan housing cooperatives were usually built on the outskirts of Montevideo. FUCVAM初期のウルグアイの住宅協同組合は、通常モンテビデオ郊外に建設されていました。

しかし、これらの初期の協同組合は都市のスプロール化を助長し、多くの欠点をもたらしました。インフラ整備が必要になり、職場や学校へのアクセスが困難になり、交通量も増加します。そして、一戸建て住宅は土地の効率的な利用とは言えません。

一方、1970年代には、モンテビデオの歴史的な中心部は廃墟と荒廃に見舞われ始めました。この時期、国の社会経済状況の変化は、新たな課題を生み出しました。非公式な仕事による不定期な収入に頼る人が増え、世帯主となる独身女性も増えました。

こうした状況に対し、住宅協同組合は驚くべき適応力を発揮しました。

女性のための、女性による

都市のスプロール化が開発を外側へと押し広げるにつれ、モンテビデオの歴史的中心地であるシウダー・ビエハ (Ciudad Vieja) では住民が大量に流出し、歴史的建造物は崩壊しつつありました。

残る低所得者層の住民を立ち退かせることなく地域の活性化を図ろうと、市は住宅協同組合を解決策として見出しました。

これがきっかけとなり、シウダー・ビエハには13の相互扶助協同組合が設立され、現在ではこの地域の住宅戸数の約6%を占めています。

この取り組みの先駆組合の一つが、女性世帯主を意味する「ムヘレス・ジェファス・デ・ファミリア: Mujeres Jefas de Familia」です。MUJEFAの頭文字で知られるこの協同組合は、1995年に低所得のシングルマザー達によって設立されました。 MUJEFAは、女性特有のニーズを念頭に置いて設計、建設、管理された住宅という、協同住宅への新たなアプローチを導入しました。

写真:日本語翻訳版では表示できません。オリジナル版を参照してください。The exterior of the MUJEFA housing cooperative, located in Montevideo’s historic city center. Bé Estudioモンテビデオの歴史的中心部にあるMUJEFA住宅協同組合の外観。

建築家のチャーナ・ファーマンさん (Charna Furman) がこの取り組みを主導しました。彼女は、女性が安定した住居を見つけることを阻む構造的な不平等、すなわち、男性への経済的依存、女性が主な養育者であること、そして独身女性の経済的資源へのアクセスが限られていること を考慮した住宅政策の欠如といった問題を克服したいと考えていました。

シウダー・ビエハに住み続けることは、MUJEFAのメンバーにとって重要でした。中心部に位置しているため、職場、子供の学校、診療所、そして友人や家族との親密なコミュニティに近い場所にいられるからです。

しかし、このプロジェクトは大きな困難に直面しました。1991年にグループが取得した、廃墟となった歴史的建造物を、安全で機能的な12戸のアパートに改築する必要がありました。

写真:日本語翻訳版では表示できません。オリジナル版を参照してください。 A patio at the MUJEFA housing cooperative. Bé Estudio:MUJEFA住宅協同組合のパティオ。

協同組合モデルは適応を迫られました。市当局は、古い建物を協同組合として改修できるよう、一時的に規制を緩和しました。また、立ち退きの危機に瀕し、家事労働者や露天商として働くなど、長年住んでいる脆弱な人々を、改修プロセスに積極的に参加できるグループに組織するという課題もありました。そして、彼らに古い建物の改修方法を指導する必要がありました。

現在、MUJEFA協同組合には12人の女性とその子供たちが住んでいます。これは、協同組合住宅が単に家族の頭上に屋根を提供するだけでなく、社会変革の手段となり得ることを示す、説得力のある例です。伝統的に都市計画から排除されてきた女性たちが、自らの家を設計・建設し、自分たちと子供たちの安全な未来を築くことができました。

外へではなく、上へと築く

2015年に完成したCOVIVEMA 5は、モンテビデオ中心部の住宅街に初めて建設された高層相互扶助協同組合です。約300人の住民が住み、2棟の建物に55戸のユニットが点在しています。

写真:日本語翻訳版では表示できません。オリジナル版を参照してください。COVIVEMA 5, Uruguay’s first high-rise, mutual aid housing cooperative, was completed in 2015 in Montevideo. Bé Estudioウルグアイ初の高層相互扶助住宅協同組合であるCOVIVEMA 5は、2015年にモンテビデオで完成しました。

組合員は、ウルグアイで最も古く、最も尊敬されている技術支援機関の一つであるウルグアイ協同組合センター (Centro Cooperativista Uruguayo) の指導の下、建設プロセスに参加しました。建築家は、建設経験の浅い一般の人々でも高層ビルを建設しやすいように、設計を調整する必要がありました。組合員は、垂直建設と安全手順に関する専門的な訓練を受けました。組合員が建設に貢献する一方で、必要に応じて熟練労働者も投入されました。

組合員はまた、密集した地域に住民が集い交流できるオープンスペースを創出した公共広場、プラザ・ルイサ・クエスタ (Plaza Luisa Cuesta) の設計・建設も行いました。

住宅協同組合は、公的機関でも民間機関でもありません。効率的かつ効果的な住宅供給の「第三の道」、つまり住民に住宅への権利を与え、長期的な安心を提供する方法と考えることができます。しかし、その成功は、制度的、技術的、そして財政的な支援にかかっています。

写真:日本語翻訳版では表示できません。オリジナル版を参照してください。Members of the COVIVEMA 5 cooperative collaborated with neighborhood residents to design Plaza Luisa Cuesta. Bé Estudio:COVIVEMA 5協同組合のメンバーが近隣住民と協力してプラザ・ルイサ・クエスタを設計した。

この記事は、クリエイティブコモンズライセンス(CCL)の下で The Conversation と各著作者からの承認に基づき再発行されています。日本語訳は archive4ones(Koichi Ikenoue) の翻訳責任で行われており、The Conversationによる正式な翻訳ではありません。オリジナルの記事を読めます。original article.

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